念願の店

成田屋大披露宴の帰り道、京都へ寄って、かねて念願の店へ鮎を食べに行く。嵯峨野の里に名高き老舗「平野屋」。

ひばりが夏の京都へ来ると必ず大勢引き連れて食べに来た有名過ぎるほどの名店だが、これまで機会に恵まれず、去年の秋から来年こそはと言い続けてやっと辿り着いた。


鳥居本の意味を初めて知った愛宕さんの大鳥居のすぐそばに建つ茶店風の店構えは想像以上に歴史ある佇まい。


築三百年以上の建物に入るとタイムスリップした様な気分。各部屋には、映像でしか知らないが大好きな花柳章太郎、市川寿海ら名優の貼りまぜ屏風が通人たちに愛された店である事を物語っている。


料理の前に、ここが茶店だった時代からの名物「おしんこ」が出される。漬け物ではない、もち粉のお菓子である。きな粉が気分をほっとさせてくれる。ビールで口を湿したところで本編の料理。


まずは山里らしく山菜づくしから。蕗の炊いたのにも山椒を利かせているのが京都ならではである。


つづいて鮎の造り。まったく臭みがないばかりか、そこはかとない甘味があって大いに美味。醤油に添えてあった生姜は無用と思えた。


塩焼きはさすがに香ばしく上々だったが、私はここらで分かって来た。私が京都で食べたいのはもっと小さく、頭からかぷっと行っても骨張らない、ごく小さい稚鮎のたぐいなのだ。ある程度から大きくなったら我が四万十川の鮎の方が食べでがあるし、わたも苦味が有って旨い。
とは言うものの、続く田楽仕立ての味噌も甘からず辛からず絶妙。




鮎寿司や鮎の酢物の入った八寸のあと、鮎のお粥が供された。鮎雑炊ではない、お粥である。これが今まで食べた事の無い絶品。絶妙の塩加減で唸ってしまい、お代わりを頼む。それでも足りなくて三杯目を所望したら「このあと鮎ご飯が出ますけど」 と言われ我慢する。


鮎ご飯も今までの最高レベル。昼間食べ過ぎてなかったら、もっとお代わりしていただろう。

満腹の帰りがけ、連れが玄関座敷で松たか子ちゃんのサインを発見。日付を見るとなんと四日前。女将さんに聞くとキリンビールの撮影で来ていたらしい。私は前日海老蔵さんの披露宴で会ったばかりで、たか子ちゃんが帯をシュッとしごいて「美馬さんとこの締めてきましたよ」と合図してくれた顔が浮かんで、嬉しいやら奇遇やら。
かくして大満足で初平野屋を後にしたのであった。

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.