京の名店またまた

久々に美味しい店を発見した。
前々から雑誌等で見てはいたが、縁がなく未到だった京都の名店「天婦羅 松」。
天ぷらとは名ばかりで実際は、「これぞ創作料理」と言うべき内容豊かなコース料理である。
昨夜は問屋さんの招待だったので値段は不明だが、一から十まで私の口に合い、大いに気に入った。間違いなく定期的に行きたい行きつけの仲間入りである。


まづは先付けの器でおどかす。1690年頃の乾山との事で、最初は裏向けにして文字散らしを見せ上に紫式部をあしらい、やがて表向けにして料理を盛る。
こういうパフォーマンスが私はだいたい好きでないが、いかにも高級店のしつらいでなく、居酒屋風のガヤガヤした賑わいの中でこれをやられると、かえって嫌味がなく、楽しませる。


河豚を酢味噌で食べさせる一口サイズの鮨、栗チップにむかご、そして小芋の擂り流し。いずれも季節を感じさせる小品で、のっけからこの店のただ者ではない事を予告する。


続いて揚げ物の一皿。とうもろこしの粉で作った皮で鯛を包んで揚げたのの上に生雲丹をのせたもの、そして雪の下の葉と鱧の細長い部分(はらんぼか?)の天ぷら。器は魯山人。


次に幕末の朱塗りの器に盛られた海老のおどりと茄子の味噌椀。これがなんとも言えない優しい味。口当たりがおぜんざいのようで、身内に沁み入る様に入ってゆく。


お次は小さい土鍋で一人前づつ炊いて供する鮎めし。炊く前にピチピチ活きの良いところを見せ、焼いたものを炊き上がった飯にまぜる。ご飯は何の出汁で炊いてあるか聞きそびれたが、美味くてお代わりしたい味。


そして焼き物が鱧とグジ。鱧は絶対に梅肉で食べさすものではないという主人のおすすめは鱧の骨から取った出汁で割った鱧醤油。確かにどこの店でも梅肉を出すが、あれは鱧の微妙な味を消してしまい、梅ばっかりの味になってしまうので、本当に美味い新鮮な鱧には無用の物であろう。料理人の腕のなさをごまかす為に重宝なものと言える。


そして小さい湯呑みで出されるのが、やはり鱧の骨の出汁で取った湯葉のお吸い物。どこまで行っても出汁だなあ、と思う。こんな美味い出汁が取れる骨を、ろくに使えない職人が多いと聞く。もったいないとはこの事。


続いて鱧だけで作ったひろうすが絶品の炊き合わせ。ここはとにかく一品の量が丁度いい。もうちょっと食べたいという手前の寸止め感が、次は何?という期待をいやが上にも膨らませる。


そしていよいよ本日最後の料理、岩牡蠣の和風グラタンである。昆布と湯葉のとろみで仕上げた絶妙の一品。ちょっと他には無いセンスである。


〆は特製の氷の器に入った素麺を鮎の旨味が効いたつゆでいただく。これだけは私は稲庭うどんの方がしっかりしたつゆと相性がいいと思ったのと、茹で立てではなかったのか、コシが足りなかったが、それでもお代わり。

おまけにサービスの鱧茶漬けをいただき、デザートは蕎麦のアイスクリーム。これも美味い。ただ最後の中国茶はなくもがな。出すならミニ抹茶か蕎麦茶だろう。
何にしても満腹満足、次の訪問が待ち遠しい店であった。

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.