フルコースな一日でした

東京八泊九日の旅もいよいよ今夜が最後。

今日は朝十時半から染五郎、青楓両人の一日だけの舞台、「渋谷金王丸伝説」を観に渋谷区文化センターへ行き、終演後楽屋をのぞいて急ぎ日本橋の画廊へ。お客様からのご紹介で、小唄の会に出るので紋付の着物が要るというお客様のお顔を拝見に行く。

その前に昼飯。日本橋の駅近くの小料理屋のランチメニューにふぐ雑炊があったので、それを頼んで食う。二十分足らずで熱々の雑炊を掻っこんだら汗びっしょり。
そして二時から文学座公演「くにこ」。向田ファンとしては感慨深く、主演の若手女優がなかなかやるなと思ったら蟹江敬三の娘と聞いて納得。
そして時間潰しにふらっと入った柿傳ギャラリーで、漆作家本間幸夫さんの個展に遭遇。掛花が滅法気に入っていただく。

それから目黒の染五郎邸へ。再来年の十五周年イベントの打合せを兼ね新居を拝見後、近所の鳥料理屋へ招待を受け食事。いつも劇場で会うと行儀良く大人しくしている齋くんと薫子ちゃんが自宅では解放されて無邪気そのもの。私が着くなり「美馬さん見て!」とおもちゃ披露の嵐。食事に行っても二人の愛らしさに仕事の話はどこへやら、ひたすら遊び相手になって楽しむ。うちの子供もこうして遊んであげれば良かった、とふいに我が子の顔が浮かぶ。

それで終わらない今日の強行軍。たまたま集まっていた高校の在京有志の飲み会に十時から飛び入り参加。
学生時代はほとんど喋った事のない同級生までが、えらく懐かしんでくれ、「美馬と言えば山田五十鈴元気かえ?」と尋ねてくれる。まあ、全国のあらゆる学校の今年四十歳の学年の中で、山田五十鈴を知っている割合の多さにかけて、我が土佐高の右に出る所はあるまい。我ながら凄い布教力である。思えば十二、三から、自分の尊ぶものを人に知らしめたいという半ば原理主義的活動をしていたのだと改めて感じ、おかしいやら、健気やら。

中でも一番会いたかった祥ちゃんに二十年ぶりに再会し、「美馬がぎっちり言いよった美空ひばりの凄さが大人になってよう分かった」と言われ、嬉しくて三次会の門前仲町のスナックまで足を延ばし、数曲を魂込めて唄い上げる。
しまいには美馬プロデュースの歌舞伎観劇会をやってくれという話まで出て、いやはや瓢箪から駒。
歳を取るほど、昔の友は有り難く、懐かしいものである。

その高校時代の友と離れ、東京へ旅立ってからずっとの付き合いの染五郎といい、どうしてこんなに良い友人に恵まれるかと、天を拝し地を拝し、久々の特上の酔い心地で銀座へ帰れば四時。でも私は前歯を折られたりはいたしません。悪しからず。

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