江戸前のすし

今日は一泊二日で東京へ。ちょっと取り込み有って、四泊五日の筈が急遽予定変更。最低限の用事に絞り、染五郎さん出演のル・テアトル歌舞伎と、お得意様のご紹介で初めてのお客様とお会いするのみのタイトな出張。

テアトル昼と夜の間が三時間も空くので、劇場近くの画廊を一軒覗いてから日本橋三越へ。美術サロンでは雛祭り関連の作品が色々あり、店用に前から探しているので真剣に見て回ったが、人形はなかなかすぐに気に入る物はない。
と、可愛らしいぶりぶりを発見。目出度い模様付けの上に、ちょこんと夫婦雛が乗っている。
値段も手頃でウィンドーの飾りにぴったりと求む。

お腹も空いたし、特別食堂で何か食べようと思って上がると「日本の寿司展」というのをやっている。寿司幸はじめ十数店の鮨屋がにぎりやら、チラシやら、様々な折り詰めを売っている。また、三店は臨時の店を出して食べさせている。
寿司幸へ入ろうと思ったが、思い直して販売コーナーを三巡し、九段下寿司政の「宝珠ちらし」なるばらちらしを買うことにした。
一折り三千百五十円なり。夜食にとも思ったが、やはり買ったら早く食べたい。屋上へ上がり、売店で生ビールを買って、さあ食べましょう!
と、ここが流石に二月の午後五時、吹きっさらしの屋上である。寒い、マジで寒い。
しかし、広げた鮨折りを今更どこへも運べず、ままよと箸をつける。


美味い。まずは赤貝が舌に触れる。コリコリの食感と磯の香りがたまらぬ。
具の下には芝海老のおぼろが甘過ぎず、微妙なしっとりさで、最後まで飽きさせず、海苔の青さが時々目に休息を与えるリズムは仕掛けも仕掛けたりの間の良さである。
赤酢を使っているのが本当の江戸前だと売り子のお姉ちゃんが言っていたが、めしの酢加減がまことに巧い。
茹でた海老は小味がして弾力あり、コハダはしっかり〆てあって噛めば噛むほどジュワーっと旨味が沁み出て来る。
このコハダの酸味と塩分で、汗が吹き出して来る。

寒風吹き荒ぶデパートの屋上で、コートにマフラーで防寒しながら、汗をダラダラ流し、その汗をタオルで拭き拭き鮨を食う男。あんまりいないだろう。
売店の男が奇異な目で私を見ていたのも無理はない。
しかしこの鮨は気に入った。そう言えば国立のご隠居山口瞳先生の行きつけの鮨屋も九段下だったなあ、と思って夜中に携帯で検索すると、何とこの寿司政であった。ぜひ近いうちに本店を訪れようと思う。
今度はコートを脱いで、熱燗をちびりちびりやりながら。

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.