再開

大震災以来、駄文を書く気概は失せ、すわ絶筆か、と思われたが、そうも言ってはいられない。
ようやく私の重い筆を取らせたのは浅丘ルリ子であった。
「ザ・スター」なる番組で高橋英樹のゲストとして出て来た瞬間、浅丘ルリ子じゃくなくて浅川マキかと思った。
しかし言うことは正しい。桃太郎侍に向かい、バラエティーばっかり出てんじゃないわよ!ちゃんとした仕事しなさい!歯に衣着せぬ物言いである。
当代仁左衛門の「不逆流生」の言葉が重層的に頭をよぎる。

同じくゲストの鶴太郎の書画。これは私には分からない。はっきり言えば全く美しいと思わない。
龍馬伝の紫舟の書と同じく、最もあざとい技巧と自己満足の産物であり、日本古来の芸道の中で最も蔑まれた「ぶる」の典型である。29日付高知新聞夕刊で知事の後ろにデカデカと写っていた紫舟の書(事もあろうに龍馬の日本をせんたくの語)を見て、私はとっさに「恥ずかしい」と思った。
うわついたマスコミなんぞに乗らなくても、真に尊ばれるべき、人、技、心構えが、まだまだ我が国にはある。
しかしそれは、手に入れようとする人間の真剣さと、何かを棄てる覚悟無しには血肉となる事は有り得ないのである。見抜く側も同様に。

古師山本夏彦いわく「人間は何かを得れば何かを失う」
美馬いわく「人は何かを失えば何かを手にする」

これを夜中に書いて、明けて今朝の朝刊に、被災した福島の女子高生の言葉。
「死にたいとか簡単に言っちゃいけないと思った」
思わず熱いものがこみあげた。

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