大阪のいきつけ

今日は仕入れの合間の日曜日、大阪まで足を伸ばして松竹座へ。昼夜通しで観劇する。


近代の二大名優九代目市川團十郎、五代目尾上菊五郎を顕彰する團菊祭が、歌舞伎座建て替えで大阪まで出開帳である。
音羽屋の弁天はやはり昨年歌舞伎座さよなら公演の時が白眉であった。大阪では久しぶりかも知れないが、私は弁天は若い菊之助に譲り、逆に七代目一世一代の鏡獅子がそろそろ観たい。

芝居のはねた後は道頓堀の名店「今井」へ。
ここは昔中座のあった頃、まだ木造の情緒豊かな建物の時から、良さげな店だなあ、と思いながら、中の様子がまったく窺い知れないので踏み込めずにいるうち、法善寺横丁の火事で焼けてしまい、とうとう未踏であったのが、やがて復活して立派なビルとなって間もない頃、染五郎さんの単発公演があり大阪にへ、あくる日、前の日の打ち上げで飲み過ぎて大いに宿酔で唸っていたら染五郎さんから「どうしてます?」と電話がかかり、向こうは今井でそばを食べて今、喫茶店でお茶してると言うので合流し、「僕も今井行きたかった」と言うと「行きますか?」と言って自分はさっき食べたばっかりなのに付き合ってくれた思い出がある。実に付き合いのいい男である。
まあ、元来かなりの大食漢ではあるが。

それ以来、松竹座観劇の折り、昼の部の幕間はここが定番になっている。
今日も昼に来て温かい汁を吸いたかったが、暑かった上に着物だったので汗を恐れて山かけそばを食べたが矢張り物足りず、終演後は珍しく役者衆との約束も無かったので、心残りの無い様、初の「夜今井」へ。


まずは芹の白和え。最初メニューに「芥の白和え」と書いてあったので何かと思ったが誤字だった。
少々芯が口に残るが香りが爽やかで、椎茸他の食材とも相性よろしくまずまず。


続いて「鯛の昆布〆」。ちと締まり過ぎだが旨味十分で酒が進む。


三品目「蒸し湯葉」。どんな料理かと思ったら餡掛け湯葉だった。もとより出汁は上等なので、不味かろう筈はない。が、湯葉は京都の様な訳にはいかず。しかしそれを言うのは野暮というもの。

ラストオーダー10分前、満を持してメインのうどんを注文する。迷う事なく「きざみ」にする。


一口つゆを飲み下せば、全身に慈味となって沁みわたる。
一々「っあーっ」「うまーい」と唸らずにはいられない。
甘くなく、もちろん油臭くもない揚げの風味とジャギジャギとした食感が堪らない。長らく飲み続けで弱っていた胃が、これでやっと回復した。

昼も良いが、夜もまた大いに愛すべき名店である。

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.