冥利

あんまり食い物の事ばかり書いていると何屋のブログか分からなくなるので(当代勘三郎丈は私が楽屋へ出入りし始めて十五年以上経って、「ところであの人何屋?」と幕内の人に聞いた)、たまには着物の事を。

先日、お得意様が夏の紬の仕立て上がりを取りにご来店。

この方は、ここ数年のごふく美馬の中でも指折りのお客様で、私のおすすめする物と、あちらの好みがピタッと合ってまことに気持ちが良い。

どこどこの奥様、という方ではなく、現在でもお勤めをしながら当店の着物を一つひとつ大切にお求め下さる。

この日も、先にご購入の夏の柿泥紬の小格子の着物に、お手持ちの帯を合わせて小物を、とご来店なさったのだが、折も折、うちでは絞り展をやっていた。

ご来店前から、いらしたらあの帯を、と命じていたが、果たしてドンピシャリ、着物と帯が逢う(合うではない)、とはこのこと。

濃い焦げ茶色の小さい格子の着物に、きなりの生紬に絞りで表された水芭蕉の帯が、これ以上ない舞台を得た役者の様に、凛然と佇んでいる。

そこへ、ブルーグレーに焦げ茶の縁取りの入った帯〆が添う。帯揚げは、ごく僅かにピンク味を帯びたグレージュにブルーの丸絞り。こんな組合せが出来た日にゃあ、うーもすーもない。(ぐうの音も出ないの土佐便か)


売り手も惚れたが、買い手も惚れる。品物も喜んでいる。

まさに、三位一体である。

いま「日本経済が何をやってもダメな本当の理由」という本を読んでいるが、それによると、不況の最たる元凶は、需要と供給のミスマッチだそうな。

本当に欲しい物。それを意識下から掘り起こすのが、私の生涯の仕事である。

♪水芭蕉の花が、咲いている〜

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.