京の名店その六

今日は朝五時起きで高知を立ち、十時から七時半までびっしり問屋十二軒を回り、メインの売り出しも終わって差し迫った必要もないのにまたぞろ気に入った品を片っ端から仕入れてまわる。

そして宮川町へ商売に行き掛け、久々に京のおでんの名店「蛸長」へ寄る。


ここは開店時は行列の出来る店で、狙い目は一回転目が終わった七時半過ぎである。

仕入れにキリをつけ、頃合いと暖簾をくぐると、果たして丁度二席だけ空いていた。折も折、数日前に創業百三十年のお祝いをされたとの事で、店内には胡蝶蘭やらなんやら、お祝いムードが残っている。

何にしても、おでん屋が百三十年、というところが京都である。

問屋KのKさんと、初めヱビスビール、次いで熱燗と杯を重ねながら、絶品のおでんに舌鼓を打つ。

大根が何とも言えぬ含みに含んだ慈味であり、まったく塩分を感じさせないのにもかかわらず、しっかりと口中に満足感をもたらす。

おそらく舌でなく、上顎に呼び掛けるのであろう。


袋には牛蒡、鯨、栗の渋皮煮が入ってまことにオツ。


鱧と雲丹のしんじょも贅沢な風味。


子持鮎の昆布巻きが旬を感じさせる。


そして熱燗がうまい。白鶴。土佐鶴にも似ているが、よりガツンと来る日本酒らしさであり、おでんに良く合う。

三十分で平らげて宮川町の得意先であるお茶屋さんへ歩いていると前方にみずゑ会の稽古帰りとおぼしき芸妓の一団が。

近寄って見るとふく尚ちゃん、菊乃ちゃんがいて、「きに〜(おおきに)」「かれやす(おつかれやす)」を連呼し合って分かれる。

さあ本番、お茶屋さんで十一月のパーティー用の着物を選んでもらい 三十分で退散、一目散に京都駅を目指す。

最終の新幹線で東京へ向かい、明日は古曲会の演奏会で河東節「助六」に出演。

まっこと忙しいちや!

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