進歩

今日は紀尾井ホールにて開催された「古曲演奏会」に河東節「助六由縁江戸櫻」の浄瑠璃で出演。

何度も立った紀尾井の舞台だが、やはり本番は緊張する。
殊にこの会はお客様がほとんど古曲関係者だから、針のムシロみたいなものである。

東京展から不調の喉が、ようやく治りかけてはいたが、高音が苦しく、不本意な出来。

染五郎さんにしても誰にしても、二十五日間生身の体を引きずって舞台を勤める役者は本当に凄いと思う。

夜は小栗旬君の舞台「ドクロ城の七人」の東京公演へ。

八月に大阪公演へ行った時、楽屋を訪ねると開口一番「殺陣が下手ですみません」と言っていた彼が、今日は見違える出来。
流れるように鮮やかな動きになっていた。

そして前回「何かお稽古したら?」とアドバイスしたのだが、今日聞くと「踊りを習いたい」という。

舞台俳優は体に色気が無くては始まらない。殊にある年齢を過ぎ、若さの魅力で通用しなくなる頃、役者としての引き出し、奥行き、身体オーラがなければながく座長は勤まらない。
踊りの稽古はまことに結構な事である。

そして今回の公演では今まで実見した事の無かった早乙女太一に目を見張った。

彼の女形にはあまり興味をそそられなかったが、今回の無界屋蘭兵衛を見て実に感心、というより惚れた。

ボソボソと呟くように喋る台詞が、それでいて良く聞こえ、張る所はビシッと張って決める。

これで二十歳?と驚嘆せざるを得ない。もちろん中高生の間舞台から離れる歌舞伎役者と違い、子供の時からずっと主役をやり続けているのだから、堂々とした佇まいは当然かも知れぬが、やはりこの人は特別の様に思う。

第一、大衆演劇のクサさを感じさせず、大劇場に出て違和感がないのは大したものである。

早くこの人のホームグラウンドでの芝居を観たくなった。

予言するが、この人は将来、眠狂四郎を持ち役にするだろう。

あの雰囲気、雷蔵以来のはまり役になることは間違いない。

もう一人、小池栄子に感心。この人は巨乳ばかりが強調されるが、どうしてどうして、なかなかの演技派である。
二ヶ月に亘る公演で喉を痛めているキャストも多い中、一際通る声と滑舌の良さにはまさに舌を巻く。

この人に何か翻訳劇の名台詞を朗々と謳わしてみたい。

人物造形も確かで、キッカリした気持ちの良い芝居をする人である。今後が楽しみ。

終演後は銀座で食事後、サロンド慎太郎へ。


ごふく美馬のお客様でもある慎太郎ママと楽しく歓談。ちょうどうちから納めた紅葉の帯を結んでくれていた。

どこへ行っても楽しい仲間がいて、退屈しない人生である。

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