私のいきつけ12 La Pizzeria Nakayama

夜十時半。お茶の稽古を終え、余りの寒さに「今宵は熱燗」と思っていたが、口がどうも和食材を欲しない。街へ引き返す事にはなるが、今夜は「あれ」が食べたいと発心し、追手筋「La Pizzeria Nakayama」へ。今年初めての訪問である。

私の昔から主張している持論に「日本で一番間違いやすく紛らわしい苗字は中山と山中である」というのがある。
私の人生の基礎となった修業先「三條」の中山さんは、何十年来の顧客の一人から生涯「山中さん」と呼ばれていた。

日本の苗字のポピュラーな物の中でも、鈴木→木鈴、佐藤→藤佐、等はおよそ取り違える事はなく、田中→中田等も漢字の単純さから言えば中山山中と似た様な物だが、これは「田」1音と「中」2音の違いがある上、圧倒的に田中の方がメジャーなのでこれも取り違えない。
田村→村田などは母音が「あうあ」と「うああ」でありこれも間違わない。
中川→川中などは順序によって川の字が濁音になるのでこれまた間違う気遣いはない。

つまり、数ある苗字の中でも中山と山中は二つの漢字の印象がほぼ同レベルであり、かつまた母音が全て「あ」である上、順序を入れ替えてもさらに印象が変わらず、その苗字としての実在数も非常に近い(全国的に言うとおそらく中山の方が圧倒的に多いだろうが、高知県においては山中姓がポピュラーである)ゆえ、最も間違い易いのである。

一体何の話?と思われるだろうが今日の店のシェフは中山君である。そして私のいきつけのバーのマスターに山中君がおり、この二人を相手に飲んでいると終いに中山だか山中だか分からなくなる。(さらにもう一人東京へ行ってしまった山中君もいて煩雑この上ない)そして一度そういう癖がつくと名前を呼ぶ前に「間違われん」と身構え、正しく言ったつもりが矢っ張り反対を言っている。


生ビールを飲みつつまずは「田舎風テリーヌ」を。高知にもパテ・ド・カンパーニュを出す店は多々あるが、私は断然ここのがイチオシである。味はもちろんの事、大きさ、硬さ、粗塩と胡椒の添え具合、ピクルスの酢加減、僅かに添えられたレタスの案配まで非の打ち所がなく、これはこのまま、絶対にいじってもらいたくない定番中の定番である。


続けて「タコとセロリのサラダ」。セロリのシャキシャキ感が堪らない。トマトの酸味がいい具合で、この組合せで冷製パスタを作ったらさぞ美味かろうと思う。その場合、私的にはタコはイカにかえて。

カウンターで一人やっていた所へ市内某店の女性スタッフがこれも一人でやって来て「美馬さん!」と声を掛けてくれ、一緒に飲むことに。


いよいよ今夜食べたい「あれ」の出番である。「クアットロ ペンネ」これはメニューには無い。ピザのグランドメニュー「クアットロ フォルマッジ」が旨いので「これペンネでやって」と注文したのが始まりで爾来私の定番となった。
四種チーズの溶け合った複雑な香り、絶妙の茹で加減による歯ごたえ、短いので口の回りにベチャベチャくっつかない心地よさ。仕上げに振った胡椒がトドメとなり、ちょっと他に無い旨さである。
この「ペンネ」という所がミソである。空洞部に入り込んだソースを口の中でチューチュー吸い出す時の口福感といったら!
私にとって時折「どうしても食べたくなる」究極の中毒メニューである。

腹ごしらえに来たのであったが、他に客もなくシェフとか嬢と話が盛り上り「一杯飲みに行こう」となる。シェフに連れて行ってもらったバーは日生劇場を思わせる内装にファミレスみたいな椅子テーブルがミスマッチな面白い店で、カラオケも出来るらしい。
兄妹三人でやっているとの事だったが、引田天功を思わせる妹さんのキャラが立っていて、ぜひ又行ってみたい店である。
胡瓜とじゃこのつまみ「じゃこQ」を「うまいうまい」と言って食い、さらにはオイルサーディンを注文し「月桂樹がのってない!」と文句をいいながら(食べていくと中に刻んであった)、ジェイムソン、ブッカーズをあおり、ようやく3時終了となったのであった。

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.