高知夜魔早春

昨夜は久々にとことん飲んだ。
「ぐでんぐでん」というのはああいう事を言うのであろう。
話題が込み入って論争気味になる深酒もあるが、昨日のはそれとは違い、ただただメンバーが良く(茶友Nくん、行きつけのビストロのシェフとスタッフ、それにたまたま居合わせた客であり他店のスタッフSちゃん)とりとめもなく喋っていたら朝になっていた、という類いの物である。

私は酒を飲んで究極に嬉しくなると、手当たり次第に他人を揉み始める癖がある。
そして大抵、ツボを責めまくってヒーヒー言わし、面白がるのが常であるが、昨夜はそういうノリではなく、ただただ真面目に揉んだ。
酔いに任せて四人連続で揉んだが、みな歓喜の声を漏らし「美馬さんマジでお金取れますよ」などと言った。
当たり前である。二十歳の時から今日まで、私が指圧に掛けたゼニは半端なものではない。
揉んで揉んで揉まれまくった私である。他人を揉めなくてどうしよう。

幇間(たいこもち)
揚げての末の
たいこもち

ならぬ

マッサージ
揉んでの末の
マッサージ

である。

料理人の美食知らず、呉服屋の着物知らず、などなど世に己のメシの種たる道にさえ暗き者が数多いるが、本業の他に一つ二つの「道楽」に凝るぐらいでなければ、しぜん商いの道もせせこましくなり、遊び心の無いものとなる。
歌右衛門は藝についてしばしば「余裕のある」「ふくらみのある」ものでなければならない、と語っていた。
俳句に秀でた初代吉右衛門の句に「雪の日や 雪のせりふを 口ずさむ」という名句がある。

バブルの時にさんざ株だゴルフだ海外旅行だと浮かれておいて、いま不景気だ不景気だとお題目を唱えている手合いに、我が師山脇初子語録を一つ。

「商売人はたとえ暇でも不景気でも、そんな事を口に出したらいきません。そんな事を言うたら悪い空気がどんどんどんどんまわりに広がって行きます。嘘でも、忙しい忙しい言いよらないきません!」
言霊信仰である。

最近は逆に「繁盛してる」とか「忙しい」とか言うとやっかみを買う、などと言って実は好調なのにもかかわらず「暇です」などと嘘をつくのが当たり前になっているが、私に言わせればトンでもない料簡違いである。

繁盛してれば素直に「お陰さまで」と言えばいい。そして他人様よそ様から「あそこはどうして流行ってるんだろう?」と思わせないでどうする。そうして初めて切磋琢磨、良き競争原理が働き、全体が盛り上がって活気を呼び、ひいては雇用も税収も増えるのである。

あそこも暇なんだからうちも暇で当たり前、しょうがない、などと考える様になったらもうお終いですよ、あなた!(杉村春子調で)

暇だから経費節減。不景気だから遊ばない。
こんなだらしの無い人間ばかりだから、景気が良くならないのである。
念の為に言っておくが、私は闇雲に「浪費」を薦めているのではない。
釣りでも書画でもお茶屋遊びでもいい。何でも良いから、本物を相手に一所懸命やる事が大事である。それでこそ本業を上向ける為の英気を養う事も出来る。
有機的な「散財」は 必ず自分を磨いてくれるのであり、決してドブ捨てにはならぬものなのである。


河内山ではないが、ヒジキに油揚げの惣菜ばかり食っていては、良い思案は浮かばないのであり、少しばかりの銭を惜しんでいる間に、大事の娘の命は旦夕に迫り、ひいては國の興廃にも関わるのである。

今おとこ
急所に知恵が
回り兼ね


「馬鹿めーっ!」

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.