八つ裂きの刑

今日、何年かぶりに血圧の舞い上がる事件があった。ちょっと信じられない様な話。記憶の消えない内に、ライブ感たっぷりにお届けする久々のバトル篇。

私は毎月いくつかの銀行に、ごく零細な貯金をする習慣を十何年続けている。昔の様に積立を集金に来てはくれないので、月一回自分でATMに入金して回るのである。口座から引き落とされる積立はちょっと貯まるとすぐに支払いの足りない時に崩してしまい、残ったためしがないが、この「ちびちび貯金」は暑い日も寒い日も自分が足を運んで貯めたものゆえ、惜しくてなかなか手を付けない。家の修理や病気、子供の進学など、臨時の出費に備えた虎の子である。しかし一口の額が細いので中々育たない。

そこで以前から地元以外の銀行にも口座を開設したいと思っていたのだが、今日やっと店の近所にあるお隣E県のI銀行高知支店に出向いた。
窓口で新規口座を開設したい旨告げると若い女子行員は怪訝な顔をして、いきなり質問攻めである。

女子行員(以下 女)「E県の方ですか?」
「は?違いますけど」(高知の人間やったらいかんのか?)
「じゃE県へこれから行かれるとか?」
「いいえ」(Eと関係無かったらあかんのかい!)
「じゃペイオフ?」
「どれでもありません、ただ貯金したいだけです」

この時点でかなり不愉快であるが「ははあ、この銀行はほとんどがE県関係の法人か転勤族相手で、高知の個人客などは滅多に来ないのでこんな応対なんだな」と一応は大人の判断をした。
すると女子行員が「では身分証明書を」と言うので渡し、こちらも用紙を二枚もらって記入する。持ち帰り防止の為にボールペンにくくり付けてあるゴム紐が短過ぎ、引っ張られて滅茶苦茶書きにくい。これにもイラッと来ながらほぼ書き終えた頃、男の声(それも、早く止めなきゃ!といった慌てぶりで)で「お客様!」と怒鳴る。何事かとビックリして振り返り窓口へ行くと、ここからが耳を疑う言葉の連続である。

「お客様は数ある銀行の中からどうして当行をお選びになったんでしょうか?」
(かなりムカつきつつ)「そんなこと私の自由でしょう?」
「いえ違います。うちをお選びになった明確な理由が分からないと、口座開設をお断りする事になります」
「へえーーーーーっ!そうなんですか?」(本気でびっくり)
「はい、最近は振り込め詐欺等が多発しておりまして、新規口座の開設も難しくなっております」(私は犯罪者か!)
「おたく失礼やねえ!今まで色んな銀行と取引して来たけど、こんな不愉快な事言われた事ないですよ!」
「しかしですね、免許証拝見するとだいぶ遠い所にお住まいですし」(田舎に住んどったらアカンのかえ!)「高知には地元のS銀行さんとか色々有りますのに」(S銀とも取引あるわい!)
「家は遠くてもすぐそこで店やってますから!」
「何の?何の店です?」
「何の店でも大きなお世話!おたく本当に失礼やねえ。私やち商売でお客様からおたくの小切手もらう事もあるしやねえ」
(人の言うのを遮って)「ですからそういう理由をちゃんとおっしゃっていただかないと」
「そのあんたの物言いが失礼なと言うがよ!何で一体!客に尋問する様な口調で!無礼ですよ!」
「申し訳ございません」(もちろん全く申し訳ないとは思ってない)

「堪忍袋の緒が切れる」とはこの事である。

「ほいたら何かえ?そっちは人の免許証のコピーまで取って個人情報手に入れて(しかも最後までその写しを返さない)こんな紙に足るっばあ書かしただけかよ。ワヤにすなよ、まっこと!」

そう言って私はただ書かされただけの申込み用紙二枚を重ねて縦横にひき破り、文字通り「八つ裂き」にして、かの男の胸元めがけて投げつけ「潰れえ!こんな銀行!」と吐き捨てて銀行を出た。

無論私とて当節の金融事情が分からぬ訳ではない。しかし物は言い様であって、最初から「最近金融当局の指導が厳しく、大変失礼ではございますが、ご新規様には詳しくご質問させていただいておりますがよろしいでしょうか?」と下手に出られれば、こちらとて気分良く答えてやる。いきなり「E県の方ですか?」から始まる矢継ぎ早の尋問は不愉快極まりなく、言うに事欠いて客を犯罪者扱い。とても正気の沙汰とは思えぬ。

詐欺グループに口座を売る人間がいるのでそのクチと思われたのだろうが、せめて己らが書かせた申込書を見てから言ったらどうか?そこにはれっきとした勤務先が書いてあるのであり、金融業界のネットワークを使えばうちの業況も信用もすぐに知れる事である。

この銀行のホームページを見ると、驚くなかれ「親切で頼りがいあるベストパートナーバンク」を目指すと謳ってある。E県では新規の客を犯罪者呼ばわりするのを「親切」と言うのか?

昔、財界の鞍馬天狗と言われた中山素平(元日本興業銀行頭取)がサラ金が機械だけで金を貸すのを批判して「顔を見ないで金を貸すなんて言うのは公序良俗に反する」と言ったことがあるが、今どきの銀行員なんてモノは人の「顔」を見る力も無いボンクラなのである。

自分たちの口の聞き様が悪い故に機嫌を損ね、あれこれ詳しく言いたくなくなった客を「不審者」と見誤る愚かしさ。一体全体どんな社員教育をしているのか?

一応ケツはまくって帰って来たが、このままでは終わらせない。こういう事にかけての私の無敗の戦歴を知る人々は口を揃えて言う。「よりによって、あんたにそんな事言うてたまるかねえ!」

いまに見てろよ I 銀行!

それにしても「いよいよ」雑(ざっ)とした銀行ではある。

呉服・着物・和装 高知県高知市 (c) ごふく美馬.