年頭毒句
たった今、今年の大河龍馬伝第一回を見た。
上士と下士の差別を、これでもかと連発するのは、まず初めに同情を引く手口で常套手段と言えばそれまでだが、いささか古いと言わざるを得ない。
多面的な人間の捉え方の出来ないホンヤには、本当の人間ドラマは描き得ない。あれでは上士は全員人権無視の人非人で、下士は虐げられる一方の無辜の民である。
そんなわきゃない。誰でも虐げる側にもなり、虐げられる側にもなる。その危ういはざかいが人間界のツボであり、ドラマの原点である。何も歴史の大道具を引っ張り出さずとも、向田邦子なぞはこの事を百も承知で書いて余す所なく人間の業を描いた。
平成も二十二年、そろそろ大河も清濁合わせ飲んだ、真にリアリティーの有る人間像を描いたらどうか?ラスト近く龍馬が「憎しみからは何も生まれない」と呟くに至っては、「お前は瀬戸内寂聴か!」と嘆息するしかないのである。
どうにもならぬ事、そこにこそ人生の辛い真実があるのだから。