夜食の愉しみ3
これは私のいきつけに入れるべき様なものだが、まあ夜食の巻きに入れよう。
私のいきつけの中でも異色メニューというか、珍メニューというか、兎に角ほかに無い独特の逸品である。
それは「しじみラーメン」。
街で飲む日、十二時から一時の間に小腹が空くと必ず食べたくなる。あまり遅いと閉まっているので、その時は屋台のラーメンになるから、いつでも行ける訳ではない。
私はそもそも貝の出汁の麺類、というものが異常に好きだ。銀座の木屋では「はまぐりうどん」が定番だし、スパゲッティならボンゴレ、そしてアサリラーメンという物が有るという噂を聞いて行って以来いきつけになった銀座の路地裏の休み屋のアサリラーメンなど。
しかし「しじみラーメン」はここでしかお目にかかった事がない。
だいたいしじみというのは味噌汁でしか飲まないのが大多数の日本人だろうが、以前青森ではすまし仕立てにして胡椒をパッと振りかけて食べるのをテレビで見たことがある。早速実践するとこれがなかなかいける。
その後この店に出逢った時、私の喜ぶまいことか。高知にこんな店が有ったとは!
太に志(私のいきつけの筆頭なのにいまだ未紹介)のしじみ汁と同じ様に、飲んだ後のしじみのエキスというのは堪らないものがある。嘘かまことか肝臓に良いとされているが、そんな事はどうでも良く、兎に角体が欲し、入れてやると泣いて喜ぶのである。
どうしても泥臭さがあるので胡椒とねぎは欠かせない。ここのは青ねぎではなく白ねぎであり、それが素晴らしくマッチしている。
麺も白っぽく、やや表面がベタついた感じが、硬麺党の私にもこの場合はなんとも言えず心地よいから不思議だ。
オーナーの奥方らしき婦人は、初心者には怖いくらい愛想が無く、怒られている様な気分になるかも知れない。しかし、私はいつも言ってる様に、大衆相手の珍店名店に愛想は要らない。
それも名物の内である。
他のメニューも多々あるが、ほとんどの客がしじみラーメンを食べている。間違いなく高知で一番しじみを消費する店だろう。
しじみを使った料理でもう一つ私の大好物がしじみの醤油漬けであるが、これはどこ回りでは食べられない。韓国風(中華風?)のあれではなく、銀座の卯波で食べたそれは絶妙のミディアムレア具合といい、ニンニクその他の香辛料調味料の塩梅といい絶品であった。あれだけの為に行ってもいいくらい。
話はそれたが、しじみラーメンは高知の誇る名品であり、もっと観光客にもアピールしたら、と思うが何故かあまり人の口にのぼらない。
先日など出張で来ていた京都問屋の出張員H氏など、掛け値なしで喜び「旨いですね」を連発していた。
まあ今でもピークの時間帯は満員で入れないが、「兎に角美味しい物が沢山ある」というのが数少ないウリの高知県にとって横綱級の、ミマラン三ツ星店である。
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