京の老舗スペシャル蕎麦屋三連発その一

今日は「第三回ごふく美馬伝統芸能の夕べ 逸青会高知公演」でお世話になった茂山逸平さんが狂言の中の秘曲、大曲と言われる「釣狐」を演じるので上洛の予定を早めて京都へ。

新幹線到着後、開演まで小一時間あるので河道屋か尾張屋かで迷った挙げ句、しばらく行ってないのと蕎麦が出て来るのが早いので河道屋に決定。先斗町の河道屋銀華もいいが、今日は麩屋町の晦庵である。




ここも思い出の深い店である。

高校三年の時、初めて京都へ上り、かねて雑誌等で紹介されているのを見ていたこの店の門をくぐった。

生まれて初めて、何百年という歴史を感じさせる店に出逢い、いま思えば「病みつき」になった。

アタラシイはキライ
フルイはスキ

というへそ曲がりは、すでに十七の時からはっきりと頭をもたげていた。

それ以来、数度のみの来訪で、甚だしく一見に近いが、今日は着物を着ていたせいか、えらく接客が丁寧であった。
ここは席数も少なく、尾張屋の様にバタついてないのがいい。


まずは数日来食べたくて仕方のなかった「とろろ」をざるで。


そして「にしんざる」を茶そばで。


この茶そばが勝れもの。世間一般の「色ばっかりしょんがい〜な〜」という着色そばでなく、正味、口に含むとパアーっと宇治の緑茶の香りが漂い、風趣とか風雅とかいう心持ちを鼻の裏へ抜けさせてくれる本物である。

ニシンはほろほろとこぼれ、甘口嫌いの私にこの甘味だけは許せる感を与える。


最後の仕上げは私の裏々メニュー、「冷麦」。夏ともなれば素麺命、冷麺命、の私にとって、また全日本冷や麺愛好会名誉会員(もちろん勝手に就任)の私にとって、冷や麦と言うメニューは通心を唸らせずにはおかぬ、超マイナーな品書きである。

本来は意外に足の早い蕎麦に対する江戸っ子の夏麺として愛好者たちに珍重がられて来た物であり、稲庭うどん、半田素麺など、イレギュラー麺の頂点に立つのがこの冷麦である。

しかしその市場実態は恐るべき格差を表している。
滅多なとこでこれを食べると何やら古臭い味がしたり、こんなんだったらうどんか素麺がマシ、という中途半端なのが多い。

ここは辛子で食わせる。器も盛付けもシンプルかつ涼感抜群。

日本の夏を感じさせる。

素麺ともうどんとも違う、微妙な太さと喉越し。マイナー好きの心をくすぐる麺ではある。

腹ごしらえも済み、ちょうど良いタイミングで金剛能楽堂へ。
大盛況のロビー、客席である。
ここの庭にはたいそう立派な鯉が泳いでいる。




歌舞伎ではお馴染みの「素襖落」を狂言で初めて観る。無論こちらが元祖。

「釣狐」は逸平さんが、現時点の自分の実力を世に問う意気込みが感じられ、心打たれた。
大半の客が滑稽な仕草や展開に笑いを起こしていたが、私は狐が何度も何度も用心深く罠を試す所で、獣の憐れさが胸に迫り、泣いてしまった。

また十年後に是非観せて欲しいと思いつつ、会場を後にした。
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