直訴
いかにも役者出身議員の、芝居がかった一幕であった。
敵失をここぞとばかり糾弾して喜んでいる与党もお里が知れるが、現行憲法に於ける天皇の役割、権限云々について大真面目に論じている面々も、私に言わせればいささか滑稽である。
問題の本質はそんなところには無い。
タローの愚かなところは、無論そこに己の売名的野心もあったろうが、建前として「陛下はこういう事をご存知ない」「だからお知らせしなければならない」と世間にアピール出来るという前提があった筈である。
今は江戸の世ではない。今上天皇は幕閣の厚いカーテンに仕切られた徳川時代の将軍ではないのである。
人間天皇の二代目として、どの様な深い思慮で今日までの治世を見て来られたか?
その深さに思いが至らないから、あんな「軽挙妄動」に出るのである。実に、軽挙妄動という言葉の、近年稀に見る見本と言ってもいい。
おまけに、おまけにである。誰が嫁だと思っているのか?
まことに不敬かつ野卑な言い様をあえてするならば「あの夫婦を舐めたらいかんぜよ!」という他は無い。
五十年もこの国のことどもに心砕かれ、胸潰れ、それに対し、政治家の様な安物の、軽々しい言葉など一言だに発し給わず、ただただ、懊悩し続けながら「無言の寄り添い」を貫徹して来られた御二人に対し奉り、タローごとき生若輩が「あなたこういう事知らないでしょ?」などと訴える。
これを「僣上至極」と言わずして何と言う。
猿芝居
浅きたくみの
愚かさよ
大御心の
深きは知らず
海児
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