オリジナルの流儀
久方ぶりにハードディスクに永年入れっぱなしのNHKアーカイブス杉村春子劇場を観る。
あらためて杉村先生の着物の着こなしをまじまじと見て再発見。着物と帯の取り合わせに一種の破調があるのは前々から気付いていたが、それを纏め上げるのが、先生の場合、帯揚げなのである。
いま流行りの森田空美流着付けでは、帯揚げはほとんど見せないが、杉村春子流ではそれを最大限活かすのだ。
渋いグリーン濃淡の大胆な格子の紬に、鼠色の染帯。この時点であり得ない破調だが、それを繋ぐのが、えもいわれぬ華やかな紫の帯揚げである。
これ以上濃すぎると断絶し、これより淡いと安っぽくなる、そのあわいの、絶妙な色。紫という色ほど杉村春子という女(ひと)を表すのにふさわしい色はあるまい。帯留めは帯揚げのヴィビットさを埋め合わせるように、帯の共うすの浅葱に象牙の細工。
誰にも真似できない、杉村春子一代のお洒落である。マニュアルには無い、オリジナルの美学。これほど強い物はない。
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