主役不在
秋の東京展も無事終わり、今日は昼は国立劇場観劇、夜は成田屋の若夫婦を祝う会、の予定であった。
これは七月に開かれた結婚披露宴に招待出来なかった後援会員や河東節連中を招いて、いわば結婚報告と若女将の御披露目の形を取る筈であったが、今朝の事件で主役は出られず、何とも間の悪い集まりとなった。
出席者はおおむね贔屓であるから、さほどの混乱も無くお開きとなったが、いやはやお騒がせである。
私は河東節連中の末席に連なる者として、成田屋の隆盛を願う事はもちろんだが、その御連中や後援会の客をもてなす祝いの会の前夜、朝まで飲んでいてトラブったとなれば、自業自得と言わざるを得ないだろう。
今度は相手がまだ良かったので、この程度の事で済んだが、下手な相手と喧嘩して刃物沙汰になったら命を落としかねない。
かく言う私とて土佐の男。酒の上での失敗は数々ある。しかし、私ごとき木っ端商人と市川宗家の跡取りでは責任の重さが違う。歌舞伎役者にノブレスオブリージュを持ち出すのはお門違いだが、他人様に迷惑を掛けない、という最低限の心が無ければ、真の大立て者にはとうてい覚束ない。
他に無い素質を持ちながら、酒色に溺れてむざむざ人生を棒に振った者は枚挙に暇がない。
荒事は舞台の上だけに願いたい、と案じられる今宵であった。
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