美酒
今朝は赤坂の宿を出て山王日枝神社へお詣りに。
厄払い神仏めぐりの第三弾だが、このお社はとうからのお馴染みである。
今は銀座に出たが、以前は東京展をこのすぐ隣のキャピタル東急ホテルで長いことやらせてもらっていた。その都度、初日には必ず日枝神社に参って展示会の成功を祈願したものである。
その後は一度、染五郎さんの長男金太郎くんのお宮参りの時に付き添いで伺ったきりで、久々の参詣である。
男坂を登ると、「皇城の鎮」という掛額が、この社の格を物語っている。
ここでもご祈祷をお願いする。ここは今まで巡ったどの神社とも違い、申込書に記入すると、複写になっている領収証をくれる。
日曜だった事もあって、かなりな盛況ぶりで、何組もの家族連れと一緒にご祈祷していただく。
ここの一番の値打ちは、神棚の前に吊るされた紐飾りである。「八段結び」と言って、天井近くから床まで、朱色の房を八ヶ所花結びにして、その結び目ごとに鈴が付いている。それが左から右まで等間隔に八本並んだ様子は、まことに優美である。こういうのは他では見た事がない。
是非画像で紹介したかったが、内緒で撮るのも罰当たりだから、丁重にお願いして見たが、案の定神殿内は撮影禁止と断られた。
お祓いが終ると、願主が前に進み出て、この八段結びを振り鳴らして参拝する。一度に数人が鳴らすので、いくつもの鈴の音が重なり合って、それはそれは美しく、有難く目出度いハーモニーとなる。
本当に厄が祓われ、清められた気がする。
ここはお土産も豪華で、お守りはもちろん、破魔矢からお神酒まで下さる。
清々しく辞去し、一服しに隣のキャピタル東急へ。
アプローチは以前の面影を残しつつ、モダンに姿を変えている。
一回のティーラウンジでコーヒーブレイク。お昼時とて誰もいず、貸し切りでくつろぐ。ガラス越しに見える市松の塀につららが下がって綺麗だ。
ここの設計は隈研吾氏である。言わずと知れた歌舞伎座建て替えの設計者だが、先月客室に宿泊し、今日またこの空間にしばらく寛いでみて、同氏ならきっと悪いようにはしない、必ずや以前の歌舞伎座の空気を次代に繋いでくれるだろうと確信した。
浅草歌舞伎夜の部の前に、行きつけのうなぎ屋「初小川」へ。いつもながらキリッとした着物姿の女将が迎えてくれる。まさに江戸前の下町っ子である。
まずは味噌豆でビールを一本。次に肝焼きと白焼きで熱燗を二本。芝居前にちょっと飲み過ぎだが、もう止まらない。最後にうな重ときも吸いで〆めると丁度いい時間。
大繁盛の観音様にお参りしてから、浅草公会堂へ。
インフルエンザで休演していた愛之助丈も昨日から復帰したとの事だったが、すっかり本調子で安心した。しかし、壺坂という芝居は余程年がいかないと中々味わいの出にくいものだと思った。
終演後は藪でもりを一枚かっ込んで銀座へ車を飛ばし、おでんの名店「やす幸」で尾上青楓さんと合流。三月に開催する「第三回ごふく美馬伝統芸能の夕べ 逸青会高知公演」の打合せの筈だったが、ほとんど別の話で盛り上る。
ここのおでんはあっさり、澄んだ出汁で、これがいわゆる関東炊きではない、本当の江戸前のおでんらしい。一通り食べて飲んだが、話足りず、向かいの行きつけビストロへ。ここは豊富な種類の生牡蠣がやたら美味い。国産、舶来と味比べし、パスタで〆る。
運転の為に飲まない青楓さんに構わず私一人ぐびぐび飲むが、酔っぱらいにちゃんと合わせてくれるから、調子に乗って気分良く酔いが回る。顔も二枚目だが、性格がさらに男前で、その上ひばり好きと来てるからたまらない。何としても三月の公演を大成功させなくては、と思う。
人もまばらな銀座の日曜、まことに嬉しい一夜であった。
友ありて
寒月に酔う
銀座かな
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