私のいきつけ6 一軒家

八日間にわたる洛風林展も、いよいよ明日千穐楽を迎え、麗子ちゃんとの「美馬のおきゃく」も今夜が最後。

ラストに選んだのは、高知の老舗の中でも特にキャラの立っていると言っていい異色酒場「一軒家」。


ここは京都の問屋に連れて来てもらったのが始まりで、時々訪問している。京都問屋連の中には四十年も毎月高知に通っている古参もおり、私の知らない店を教わる事も多い。

何と言ってもテントに「高知名物」と自称しているのが凄い。中へ入ると壁の色やカウンターの手触りが、否応なしに貫禄を見せつけ、一見客を圧倒する。


店も時代がかっているが、当然のごとく二人のおばちゃんも時代がかっている。愛想なぞは微塵もない。だけど私はこの店が好きだ。


まずは刺身こんにゃくを注文する。酢味噌の具合がいい。


そしておでんをつまみ、酒をあおる。

静かな時間が流れる。何度行ってもおばちゃんから会話らしい会話は一切無い。それでいい。

いよいよ麗子ちゃんに高知最後の夜のメインディッシュを食べさせる時が来た。高知名物一軒家の名物「親鳥」である。塩とタレと両方注文する。


タレは甘過ぎないのがいい。噛めば噛むほど味が出て来る。懐かしいような、ほっこりするような食い物である。名物に美味い物あり。

おんちゃんを含めた三人のメンバー構成からして、いつの日かこの店も伝説の中の物になるであろう。まだやっているのに、すでにまぼろしの様な、不思議な、ほろ苦い酒を飲ませる、言うなれば現在進行形ノスタルジック幻想酒場である。


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