芝居
さよなら歌舞伎座公演出演ほか、書くべき事が山ほどある日々の中で、かえって書けずに飲み暮らしおり侯。書く気がしないのはやはり、そこに同志が少な過ぎる為に他ならない。
みんな昔を知らないか、忘れてしまっている。仁左衛門の滋味と枯れない色気、歌右衛門の濃厚さと求心力、不気味さ、そして梅幸の颯爽さ。いずれも歌舞伎座の芸であった。
とりわけ、歌右衛門のそれが、テント小屋でも通じたモノであったに違いない事を思えば、梅幸のそれこそ、歌舞伎座の、まさしく大歌舞伎の芸であったと感じざるをえない。
それはつまり何か?歌右衛門は私の様な田舎の高校生をも捕えて離さない謂わば劇薬の味であり、梅幸はご馳走に飽きた金持ちに箸を取らせる一流料亭の茶漬けである。反論もあろうが、いずれにしても現在とはレベルが違う。
も一回貧乏しなきゃだめかもね、芝居。